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【北海道地震】YC鵡川、店舗全壊も新聞届け続ける
被災地の厚真町に隣接するむかわ町は先日、国内最大の恐竜の全身骨格が発見され「むかわ竜」の町として注目を集めた。8日正午の段階で、町を見渡すと全壊・半壊している建物が散見され、札幌ではある程度復旧していた信号も停止したままだった。
工藤弘所長が営むYC鵡川は、町の中心地に位置する木造2階建ての建物。2階は居住スペース、1階は新聞の紙分け場のほか、副業のたい焼き店「いっぷく堂」の店舗になっていたという。
「先日新しい型をつくり、『恐竜たい焼き』を販売し始めたばかり。2階が斜めにずり落ちるような感じで、紙分け場もたい焼きスペースも全壊してしまった。集金用のバッグは見つかったが、妻の車のカギなどは見つかっていない」と工藤所長。
工藤所長は、地震当日、2人の配達員が配達に出発した後の午前2時50分過ぎに店を出発。地震発生当時は車のそばにいたという。
「10分出遅れていたら店の下敷きだった。自分も車も揺れて、車のドアの取っ手がつかめないほどで、転んでしまった」。
奥さんの愛子さんは2階の寝室で就寝していたが、ベッドにしがみつくようにして難を逃れ、大きなケガもなかった。急いで自宅に引き返した工藤所長から教えられるまで、自身が1階の高さまでずり落ちていたことに気づかなかったという。
読売新聞の当エリアは統合版地域。店舗全壊の状況では翌日からの朝刊の配達は、通常で考えれば不可能だ。
しかし、状況を察知した発行本社の担当社員が緊急支援に駆け付けた。被災後は、倒壊をまぬがれた倉庫を拠点に、工藤所長と配達員2人が担当エリアの約300世帯に配達を続けた。一方、本社の担当社員は情報が圧倒的に不足している避難所へ新聞を届けた。
配達員の自宅も全壊はしていないものの、家の中は散乱したまま。そのような状況にも関わらず配達業務に従事してくれたという。
「町全体がこの状況で、近隣の知り合いも建物が倒壊した。声をかけに行ったが、無事で本当に良かった」と安どの表情を浮かべた。自身の店が全壊するという大きな被害を受けながらも、新聞を届け続け、近隣住民の安否確認にも走る。工藤所長の心意気に、ただ敬服するばかりだった。
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